ママ友「あら奥様、こんにちは!」
主婦「こんにちは。今日はずいぶん大きな魚を買ったのね」
ママ友「そーなの! 私ったら包丁さばきもプロ級でしょ? だからこのぐらいの魚さばくなんて余裕なの~!」
ママ友「夫は掃除の腕前もピカイチだね、って褒めてくれるし!」
ママ友「それに私の夫は年収数千万! いいえもっと稼いでるかもしれないわぁ~!」
ママ友「息子は英才教育のおかげで、もう英語ペラペラだ*!」
主婦(あーあ、始まっちゃった)
ママ友「私は……、私の夫は……、息子は……」ペチャクチャ
主婦(こんなに誇らしげに話してるのを止めるのも悪いし、話させるしかないわよね)
主婦俺(身長999m体重999kg)「フンッ」(ママ友を殴る)
ママ友「」(顔面陥没全治2ヶ月)
これが現実
>>3
2ヶ月で済ませる心の広さ
>>5
草
ママ友「旦那さんの年収は?」
主婦「…」チュッ(ママ友にキスをする)
ママ友「!?……❤︎」
これが現実
主婦「それとDVがすごくて……」
ママ友「あまり殴られてるように見えないけど……」
主婦「それだけやり方が巧妙なのよ。法律の穴をくぐるみたいな適切なDVなの」
ママ友「DVに適切とかあるんだ……」
主婦「『DV王に俺はなる!』って宣言してるぐらいで」
ママ友「そのうちアニメになりそう」
主婦「10HITコンボは当たり前。この間の強P→弱P→強K→強P→弱Kのコンボは強烈だったわ」
ママ友「アニメと思いきやゲーム系DVだったのね」
主婦「うん、キャンセルやめくりまで使ってくるの」
ママ友「DVでそんな技使う人初めて知ったわ」
主婦(格ゲーみたいな動きでDVする夫を想像したらめちゃくちゃシュールだわ)
ママ友「えぇと……娘さんはどうなの?」
主婦「娘もひどいわ。すっかりスケ番に育っちゃって」
ママ友「今時!?」
主婦「そうなの一人称も“アタイ”だし……」
ママ友「天然記念物だわ……」
主婦「カバンには鉄板入れて、ロングのスカートをはいて、毎日のように剃刀で私を斬りつけてくるの」
ママ友「恐ろしいわね」
主婦「それに男遊びばかりしてて、今までに軽く100人以上と関係を持ったらしいわ」
ママ友「乱れてるわねえ……」
ママ友「息子さんは?」
主婦「ゲームばかりやってるわ。すっかりのめり込んじゃって」
ママ友「ゲーム?」
主婦「うん、何かおかしい?」
ママ友「いえ、借金まみれなのによくゲームが買えるなって」
主婦「!」
主婦(早くも矛盾が生まれちゃった……。矛盾のない物語を作るって本当に大変なのね)
主婦(設定が矛盾だらけの漫画だとか大嫌いだったけど、考えを改めなくちゃ)
主婦「えーと……盗むの!」
ママ友「万引きってこと?」
主婦「そうなの。うちの場合、万引きどころか億引きね。最新ゲームが出たらすぐ盗んでくるの」
主婦「いつだったかは、品薄のゲーム機をダース単位で盗んできたし」
ママ友「よく捕まらないわね」
主婦「やり方が上手いみたい。それに、ゲームにハマるとゲームキャラになりきることもあるの」
ママ友「たとえば?」
主婦「ボクは勇者だーって、私を木刀で殴ってきたりするの。もう滅多打ちよ」
ママ友「あなた、家族三人から狙われてるのね……」
ママ友「辛いわね……」
主婦「ええ、本当に辛いわ……」
ママ友「だけど、気を落とさないでね。頑張って生きて。諦めたらダメよ」
主婦「うん、分かってる」
ママ友「じゃあ、またね……」
主婦「またね!」
主婦(いつもは自慢話ばかり聞かされるけど、今日はなんだか勝った気分! スカッとしたわ!)
また別の日――
ママ友「あら奥様、こんにちは!」
主婦「こんにちは(まーた会っちゃった)」
ママ友「あら、右腕怪我してるじゃない」
主婦「うん、これはちょっと……(転んで捻挫したんだけど)」
ママ友「もしかしてDV?」
主婦「! う、うん、そうなの!」
主婦(そうだ、DVってことにしちゃえ! この人の中で、私の夫はDV王なんだから!)
主婦「昨日もDVされちゃって……」
ママ友「どんな風に?」
主婦「超必殺技を出してきたわ」
ママ友「ええっ!?」
主婦「しかもカットイン付きで」
ママ友「そんなことまできるの!?」
主婦「年々演出がくどくなっていくのよ、夫のDV……」
ママ友「演出があっさりならいいってもんでもないけどね、DVだし……」
また別の日――
ママ友「最近どう?」
主婦「娘がね……男を連れてきたわ」
ママ友「あら、そうなの」
主婦「それも10人も」
ママ友「10人!?」
主婦「居間を占領して、それはもうやりたい放題だったわ」
ママ友「あらまぁ……。逆ハーレムね」
主婦「アタイは石油王、だなんてほざいてたもの」
ママ友「白い石油がたくさん出てくるのね」
また別の日――
ママ友「息子さんはどう?」
主婦「昨日は大魔王になってたわ。“ビッグバン”だとか“カタストロフ”だとか叫んでたわ」
ママ友「大魔王!?」
主婦「やってるゲームに大魔王が出てくるんだって」
主婦「そのうち『俺様の本当の力を見せてやる』って服を*、第二形態になって大暴れしてたわ」
ママ友「毎日大変ねえ……」
主婦(うふふっ、同情してもらえるってのも結構楽しいものね)
ある日――
ママ友「お願いがあるんだけど」
主婦「なに?」
ママ友「今度、家に連れてってもらえない?」
主婦「え゛」
主婦「ど、どうして……?」
ママ友「あなた、旦那さんやお子さんに苦しめられてるでしょ? 一度この目で見たいのよ」
ママ友「そうすれば具体的に相談に乗れるかもしれないし……お願い!」
主婦(うぐぐ、善意からの申し出を断るわけにもいかないし、断れば今までの話がウソだったとバレそうだし……)
主婦「い、いいわよ!」
ママ友「じゃあ今度のお休みにでも」
主婦「う、うん!」
主婦「――というわけなの!」
夫「どういうわけだよ!」
主婦「お願い! DVアル中夫、スケ番男好き娘、ゲーム依存息子を演じてぇ!」
夫「俺、酒もあまり飲まないし、しがないサラリーマンなんだけど」
娘「私もまだちゃんと男の子と付き合ったことない文学少女だよ!?」
息子「ボク、ゲームは決められた時間しかやってないよ……」
夫「どうして、そんなとんでもない嘘ついちゃったんだよ!」
主婦「ママ友のマウントに対抗するため……だったんだけど、だんだん楽しくなってきちゃって」
娘「だからってやりすぎでしょ!」
息子「そうだよ!」
主婦「ごめんなさいっ!」
夫「……」
娘「お父さん?」
夫「分かった、やろう」
主婦「え?」
夫「俺たちがトンデモ家族を演じて、ママ友との良好な関係を築けるなら……やるよ。それぐらい安いもんだ」
娘「うん……私もやる」
息子「ボクも!」
主婦「みんな……ありがとう!」
主婦(ああ……私はいい家族を持ったわ)
当日――
主婦「さ、上がって」
ママ友「お邪魔します」
主婦「こっちよ」
ママ友「借金まみれのわりに、なかなかいい家じゃない」
主婦「! ……お、夫が大工さんを脅して作らせたのよ。身内を人質にしたりしてね」
ママ友「ああ、そういうこと」
主婦(セーフ!)
主婦「紹介するわ、夫よ」
夫「おうおうおう! どうも!」
ママ友「こんにちは……」
夫「くーっ! 酒がうまいぜ!」グビッ
主婦(あまり飲めないのに、昼間から頑張って飲んでくれてる……)
ママ友「話によると、アル中だと聞いたんですけど」
夫「おうよ! もう酒飲んでないと手がこうなっちまうぜ!」ガタガタガタガタガタガタガタ
主婦(ちょっとやりすぎよ! 一人だけ震度7になってるじゃない!)
ママ友「それと……DVもよくなさるとか」
夫「DVD? TSUTAYAでよく借りるけど……」
主婦「違う! DVよ!」
夫「ああ、DVね……大好き! えいっ!」ペシッ
主婦「いたっ!」
夫「えいえいっ!」ペシペシッ
主婦「いたたっ!」
ママ友「……」
娘「なんだい、客かい? おかん」ギロッ
ママ友「あなたは?」
娘「アタイは……娘だよ! “カミソリのお京”と呼んでおくんなまし!」
ママ友「は、はぁ」
主婦「えーと、男遊びが大好きなのよね?」
娘「そうさ! アタイにとっちゃ、男なんてえのは本と一緒さ!」
娘「次々に読んで……本棚にしまわれるだけの存在なのさ!」
主婦(あの恥ずかしがり屋が、男遊びが盛んなスケ番なんてムチャ設定を一生懸命演じてくれている……)
主婦(私の中で、今年のアカデミー賞は間違いなくあんたよ!)
主婦「こっちでは、息子がゲームやってるわ」
息子「……」カチカチッ
ママ友「こんにちは」
息子「あ、こんにちは」
ママ友「きちんと挨拶して下さるのね」
主婦(ま、まずいっ!)
主婦「怒って!」ボソッ
息子「う、うん。ゲームの邪魔すんじゃねええよォォォォォォォ!!!」
息子「ボク……あ、いやオレは大魔王だァァァァァァァ!!!」
ママ友「邪魔しちゃってごめんなさいね」
コメントする